第68回日本アレルギー学会報告その2
江川形平先生(京都大学皮膚科)の教育講演「皮膚のかゆみのメカニズム」から一部抜粋報告します。
今回の学会で特に勉強したかったのが、痒みのメカニズムでした。
外来では多くの子どもたちが痒みに悩んで来院されます。
特にじんま疹、アトピー性皮膚炎は頻度の多いものです。
それに対してかゆみ止めとしてよく用いられる内服薬は抗ヒスタミン剤となります。
抗ヒスタミン剤はアレルギー性鼻炎・結膜炎やじんま疹、虫アレルギーには効果的ですが、アトピー性皮膚炎や皮脂欠乏性湿疹など慢性的なかゆみには効いたという実感がほとんどありませんでした。
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かゆみは皮膚についた異物を排除し皮膚の恒常性を保つために備わった免疫反応の一つという見方ができるようです。
かゆみが脳に到達する流れを極めて簡単に整理すると
皮膚に刺激→皮膚に炎症が生じる(様々な免疫細胞、皮膚角化細胞(ケラチノサイト https://www.derm-hokudai.jp/textbook/pdf/1-01.pdf)などが活性化→かゆみのメディエーター産生)→抹消神経が受容体というものを介してメディエーターの刺激を受け取る→刺激がかゆみ信号として脳に伝達となります。
このメディエーターにはヒスタミンとヒスタミン以外の2つに大別されます。
非ヒスタミンメディエーターとして重要な物質にはサイトカイン(IL-31、4R、13など https://www.amed.go.jp/news/release_20170109.html)やプロテアーゼと言われるものがあります。
神経受容体にも色々な種類がありますが、こちらもヒスタミンの刺激を受け取るものと非ヒスタミンから刺激を受け取るものの2種類に大別できるのだそうです。
じんま疹などはヒスタミン、アトピー性皮膚炎のかゆみには非ヒスタミンメディエーターの関与が大きいそうです。
そのためにアトピーでは抗ヒスタミン剤が効きにくく、外用ステロイドや保湿剤によるスキンケアで皮膚の炎症を抑えることでかゆみを抑えていかなければならないというわけです。
なるほど納得です。
アトピーを治すにはとにかく負のスパイラルを止めることが必須ですね。
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2016.880654/data/index.html
講演ではアトピーのかゆみを抑える色々な薬剤の開発・治験も紹介しておられました。
そのうちの一つとしてIL-31の受容体阻害薬がアトピーの治療薬として期待されているようです。かゆみだけではなく皮膚炎の改善にも効果が確認されており(http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/documents/170302_1/01.pdf)、今後の展開に注目していきたいものです。
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